「蚕の観察経過」
もうすでに最初からでは1ヶ月以上になるだろうか。
繭なかで蛹になるまで八割位の確率であり成虫(蛾)として誕生した確率は九割程でした。
繭の中で死んでしまう個体も確認しました。
千年以上の前から人間に飼われてきた蚕を実際に誕生から成虫まで見てみると儚い生き物でした。
元々は自然界の蛾でありますが人間が蚕の繭に目をつけ絹を採取する目的で改良を加えた結果、飛ぶことも出来ない蝶類が誕生したのです。
日本でもその昔は多く飼われて絹はもちろん、食糧難の時代は貴重なタンパク元でもありました。
歴史的にも機織りに大変大きな影響がありましたが人口的な化学繊維が開発され姿を消すこととなりました。
しかし現在、絹と限らず天然素材の見直しがされていますが年々高価な材料となり一般的場所から姿を消す日が来るのかも知れません。
当たり前だったことが当たり前では無くなる。そんなことを繰り返しながら科学や工業製品が発達してゆくのも事実です。
ただ日本の手仕事というのも時代ごとに新しい香辛料を作り手が加えながら進化して今があります。
現在の位置が良かったのか悪かったは別として作り手が未来へ伝達する志がどうなのかということと本当に大切なモノや事が何かを見極める残酷な判断も大きな影響を与えるということです。
地球温暖化のように失う予測があったとしても結果が起こってから認識するのが生き物の頂点になった人間というものなのかも知れませんね。
最後に、私の手仕事では今のところ天然素材意外に工程がどうしても出来ないところがありますその中の材料の一つが真綿(絹)です。いずれは諦めざる得ないことも想定されますが今回の実際を通して子ども達に少し何かを伝えられたと思います。
言葉では伝えられない生き物のメッセージは大きな力だと強く感じました。
荒神堂/鈴木富喜