<修復日記>
大変な日々が更新されてしまいます。
修繕の為に紫外線と湿気による漆の劣化は表面上では判断しづらい点もあります。
比較的新しいモノの多くは場合はサフェイサー(科学処理)されたものが大半でありますが、今回のケースは「泥下地」によるものでした。
私の手掛ける場合は錆漆による中下地を行います。
この二つの違いは異なる利点があります。
泥下地では漆を全く含まない技法で初めから短い期間で完全修繕を前提にする場合には良いです。
しかし短所もあります。それは湿度変化を繰り返し下地ごと剥がれてしまうことが必ず発生します。
よって漆の経年変化による育った色合い時代も一度全て剥がし修復が必要になります。
一方、錆漆で行う場合は茶器などの修復と同じなので湿気や湯などにも強い耐久性があります。
また酸性や殺菌効果もあり優れた天然素材です。
長い年月をかけて育つ風格は同じモノが存在しないでしょう。
短所としては修復時間が必要なこととコスト面をどう判断するかが問題でもあります。
長所としては例えば修繕を行う場合でも歴史の色を生かした直しや中塗から艶色まで原形の彫刻を最大限に生かす修復が出来ること。
大変専門的内容にもなってしまいましたが日本古来の技法は人の感覚に寄り添った優しさがあると思いますよ。
荒神堂/鈴木富喜